Interview

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2019.11.27UP

前編:東京五輪に向けてバスケをもっと身近に感じてほしい
アルバルク東京 田中大貴×松田悟志

松田悟志さんが、Bリーグ選手とバスケ談義を繰り広げるインタビューシリーズの第2弾に、アルバルク東京のスター、田中大貴選手が登場。日本代表にも名を連ねる田中選手に、今夏に開催されたワールドカップの話と、来年に行われる東京オリンピックへ向けた想いを聞きました。

松田_今年はワールドカップという大きな大会がありましたけど、実際にコートに立たれてみて、手応えはどうでした?

田中_ワールドカップの前に埼玉で親善試合があって、その時は勝ったり、負けたりだったんですけど、内容が良かったので、本番でもある程度いけるんじゃないかと思っていました。アルゼンチンやドイツといった強豪国にも十分に戦えていたので、良い手応えを持って大会に臨めましたね。でも、本番はまるで違いました。相手の圧力に対してまるで対応できず、悔しい結果になってしまいました。

松田_史上最強と言われていたように、選手一人ひとりを見ると、そんなに簡単に負けるようなメンバーではなかったと思うんですが、結果的には5戦全敗。どのあたりに一番差を感じましたか?

田中_負けた原因はいろいろあると思うんです。これは言い訳になっちゃうんですけど、ワールドカップのような大きな舞台を経験している選手が少なかったことが、一番の敗因だったかなと思います。日ごろから高いレベルでやっている選手と、Bリーグしか知らない選手。その差は大きかったのかなと。自分も初めての舞台でしたし、まるで違う世界だなと感じました。ただ、負けて帰って来ましたけど、この経験を次に生かさないと意味がないと思っています。

松田_頼もしいですね! 先ほど圧力という言葉を使われましたけど、具体的にそれはどういった感覚なんですか?

田中_本当に漫画みたいなんですけど、相手が実際よりも大きく見えました。身長はあまり変わらない選手でも、明らかにデカく感じるんです。精神的な部分が大きいのかなとは思うんですが、圧が半端なかったですね。

松田_そのなかでも、通用した部分もあったと思うんです。

田中_自分に関して言えば、普段「ピック・アンド・ロール」(※オフェンス戦術のひとつ)というのを使うことが多いんですけど、それに関してはやれたところはあります。

松田_確かに、田中選手のいつもの形で点が取れていましたよね。

田中_ただ、いつものプレーを40分間継続できるかどうかが重要で、ひとつ、ふたつ良いプレーはできましたけど、激しいフィジカルの中でそれをやり続けることができませんでした。実力が足りなかったと、自分でも理解しています。

松田_普段は当たり前にできていることが、世界ではなかなかやらせてもらえなかったという感覚ですか。

田中_そうですね。特に海外の選手は、ボールがないところで、めちゃくちゃ当たってくるんですよ。自分が動こうとしても、一発目で当てられて、タイミングが遅れてしまう。スムーズに動けなかったことも、チームとしてなかなかリズムが掴めなかった原因だと思います。

松田_ただそういった感覚を味わったことは、来年の東京オリンピックに活かされるんじゃないですか? やっぱり、日本代表として戦うことは、普段アルバルクでプレーする時とは違うんでしょうね。

田中_極端に言えば、全部違いますね。監督が違えば、やるバスケットも変わりますから。

松田_心持ちも変わってくる?

田中_試合に臨む気持ちはそこまで変わらないんですけど、当然、国を背負って戦う分、いろんなプレッシャーはありますよ。

松田_日本の代表ですからね。どんなプレッシャーなのか、僕らにはまるで想像できない……。

田中_今回のワールドカップは、今までに感じたことのないプレッシャーでした。注目も大きかったし、期待感も大きかったので。「日本はどこまでやれるのか」っていう風に見られていたなかで、絶対にやらなければいけなかった。別に追い込まれて萎縮したわけではなく、世界の舞台を楽しみたいという想いもあったんですが、なかなか難しかったですね。

松田_ただ、敗れたとはいえ、田中選手が言うように多くの人がワールドカップを見たと思うし、バスケットに初めて興味を持った人もたくさんいると思うんです。それこそ、オリンピックで応援しようって。日本のバスケット界が盛り上がっていくためにも、ここからが重要になってきますね。

田中_そうですね。ワールドカップではダメだったけど、オリンピックではやってくれると思ってくれている人たちも多くいると思います。その期待を感じる一方で、自分たちには今、危機感しかありません。開幕まで1年もないですし、オリンピックはワールドカップよりも厳しい大会ですから。

松田_ワールドカップは32チームで争われましたけど、オリンピックは12チームしか参加できないですからね。

田中_僕たちは自国開催なので出られますけど、ワールドカップで僕たちに勝ったトルコでさえ、オリンピックには出場できません。

松田_アメリカも、ワールドカップには出なかったNBA選手が出場を表明していますしね。

田中_そうなんです。より厳しい戦いが待ち受けるなかで、メンバーは危機感を持っていますし、何かを変えないといけないと、日々取り組んでいると思います。絶対にワールドカップと同じような結果になってはいけない。ラグビーの盛り上がりを見るとなおさらですね。

松田_確かにラグビーは結果を出したからこそ、あれだけ盛り上がったわけですからね。

田中_結果がすべての世界ですから。Bリーグができて、バスケ界も徐々に盛り上がっています。でもその盛り上がりをつなげていくためには、日本代表が強くならないといけない。そう考えると、すぐにオリンピックがあるのは逆にチャンスですし、何とか結果を出したい。もちろん、怖い気持ちもありますけどね。

松田_ワールドカップに出たことは評価されるべきでしょう。でも勝たないと、さっと引いてしまうのが、この世界の常ですからね。ただ結果はもちろん重要ですし、もちろんプレッシャーはあると思いますけど、やっぱり楽しんでプレーしてほしいですね、一ファンとしては。なにせ、東京で開催されますから。せっかくの舞台を楽しんでほしいです!

田中_そうですね。自国で開催されるオリンピックに出られるなんて、そうそうあることではないんで。もちろんまだメンバーは決まっているわけではないですけど、もし出られるなら、すごく楽しみですね。

後編に続く。

Styling:Shiori Toba(松田悟志)

Profile

田中大貴
1991年9月3日生
長崎県出身
192cm/93kg

長崎西高校時代に1年生からスターターとして全国高等学校バスケットボール選抜優勝大会(ウィンターカップ)に出場。2年生のときにはインターハイとウインターカップでベスト16に進出し、東海大学に進学。アルバルク東京でも華麗なプレイでエースとして活躍している。FIBAバスケットボールワールドカップ2019日本代表として出場。