2021.05.19UP
松田悟志さんと今月のバスケ雑談
〜現代のポイントガード 後編〜
PGを雑談する回の後編! やっぱり頭がよい選手はカッコいいプレイをたくさんしているようです!
――ジェイソン・キッド以外に、印象に残っている選手はいますか?
「ジェイソン・ウィリアムスって知ってます? ジェイソン・ウィリアムスはポイントガードとしてはかなり異端で、面白いんですよ。ジェイソン・キッドのちょっとあとくらいに出てきたんですけど、この選手に影響受けたポイントガードはかなりいると思いますよ。本当にプレーが魔法使いみたいな感じで、どうやってそんな奇想天外なことをやっているのかって。クリス・ポールみたいに教科書のようなポイントガードもいれば、ジェイソン・ウィリアムスのようなひとクセある選手もいる。だから面白いんですよ」
――日本だとあまりいないですね。
「並里成選手は奇想天外なプレーをしますよね。あと、レバンガ北海道の桜井良太選手ですかね。194センチあって、“リアル流川”って言われているくらいで」
――それは、興味深い。
「桜井選手は高校の時に、当時最強と呼ばれていた能代工業を、ひとりで倒してしまうという伝説を残した選手ですね。確か、ひとりで50点くらい取ったんじゃないかな。まさに歴史に残るような番狂わせを演じたんです」
――まさに“リアル流川”ですね。
「その当時はパワーフォワードだったと思うんですけど、北海道に入った後に、監督から『桜井がポイントガードができたら、このチームは飛躍する』と言われて、ポイントガードになったんです。当時は194センチの大型ポイントガードは日本にはいなかったから、インパクトは大きかったですね。実際に桜井選手のポイントガードを、僕も会場で見たことあるんですけど、ちょっと驚きましたよ。五十嵐圭選手に聞きましたもん。『桜井と当たった時、どんな感じだった』って。圭くんがいうには、横のスピードでは負けないから怖さはないけど、ゲームメイク力は確かだと。頭はちゃんとしたポイントガードなんですよ。ポイントガードはそこが一番大事ですからね」
――日本では、身長である程度ポジションは決められるんですよね。
「そうですね。中学、高校で、だいたい身長順に振り分けられるので、将来がある程度決まっちゃうんです。ただ、その視点で評価されているのが洛南高校の作本信夫雄監督。竹内兄弟を育て上げた監督ですね。作本監督は、身長を一切考えに入れなかったんです。竹内兄弟は2人とも2メートルを超えているのに、普通に3ポイントを打つから止めようがない。ポイントガードではないけど、ボールも運べるし、ハンドリング力もある。今までの日本にいなかったタイプの5番の選手ですね。もし、高校時代に、『センターなんだから3ポイントを打つな』と言われて育てられていたら、あんな選手にはなれなかったと思う。でも作本監督は、『シュートが上手ければ、ポジションに関わらず3ポイントも打っていい』と許容する監督だった。今のNBAもそうじゃないですか。シュートが上手かったら、2メート20セントのポルジンギスでも、3ポイントを打つんですよ」
――時代を先取りしていますね。
「そうなんですよ。フィジカルももちろん重要ですけど、やっぱりテクニックや頭脳が重要なんです。最近特に思うのは、昔に比べて頭脳戦になっているということ。トレーニングの質も上がっているし、筋肉に対する研究も進んでいるので、フィジカルの差は出にくくなっているんです。でも頭脳の差はいまだに埋めきれない。僕がBリーグの選手を心から尊敬しているのはそこなんです。僕は大学でもバスケをやっていたし、1オン1の大会で優勝したこともあります。フィジカルに自信があったから、個人の戦いでは結果を出せたんです。でも5対5になると、大学レベルにはついていけなかった。システムが複雑すぎて、頭が追いつかなかったんですよ」
――レベルが上がれば上がるほど、戦術理解の高さが求められると。
「ロッドマンはああ見えて、戦術を理解するのが一番早かったですから。とにかく頭が切れる選手でしたね。リバウンド王になれたのも、フィジカル以上に頭脳的なプレーがあったから。ロッドマンは味方がシューティングやっている時に、自分はシュートを打たず、どこにボールが落ちてくるか、ゴール下でずっと見ていたんです。そういうエピソードを聞くと、彼はフィジカルではなく、頭を使ってプレーしていたことがよく分かります」
――身長もめちゃくちゃ高いというわけではないですもんね。
「実はリバウンドを取るには、あまり身長は関係ないんですよ。ラプターズにいるカイル・ラウリーという選手は、身長185センチくらいのポイントガードなのに、かなりの確率でリバウンドを取るんです。ロッドマンとかと一緒で、落ちるところを見極める能力がすごいんでしょうね。ウェストブルックも190センチそこそこなのにミスター・トリプルダブルと呼ばれるのは、リバウンドでもしっかり結果を出せるから。フィニッシュの回数を考えれば、自分が飛び込む回数が少ないのに、1試合平均で10回以上のリバウンドを取るのは信じられない確率ですよ」
――八村塁選手はすごいプレーヤーと一緒にプレーしているわけですね。
「嬉しいのは、ウェストブルックは八村選手との相性がいいこと。例えばフィニッシュに行って無理と判断したら、惜しげもなく八村選手にパスを出すんです。こいつに渡すくらいなら俺が打つじゃなく、しっかりとパスを出してくれる。2人に信頼関係が生まれている証拠でしょう。ウィザーズは現状、成績こそ振るわないですけど、負け方は悪くない。ほとんどが2点差、3点差で、圧倒的に負けた試合はほとんどない。スタッツだけ見ている人は弱いなと思う人も多いでしょうけど、紙一重で負けを勝ちに変えられる可能性がある。流れは悪くないと思うので、これからすごいことになりそう。そんな期待を感じさせてくれますね」
→前編はコチラから
俳優 松田悟志
三池崇史監督に声をかけられ99年「天然少女萬NEXT~横浜百夜篇~」でデビュー。2002年「仮面ライダー龍騎」にて主演。中学生のときに本格的にバスケットをはじめ、高校時は大阪大会ベスト8、短大時に関西芸大リーグ4大会のうち3度の優勝とMVPを獲得している。現在も時間を見つけてはバスケットをプレイする、知識も豊富な真のバスケ好きな一面ももつ。
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