2021.05.19UP
松田悟志さんと今月のバスケ雑談
〜現代のポイントガード 前編〜
今回は司令塔ポイントガード! 憧れの選手や今のPGってどんなプレーをしているのかを雑談しました!
――今回はポイントガードをテーマに話を聞いていこうと思います。松田さんが考える理想のポイントガードってどういう選手ですか?
「僕がポイントガードというポジションの選手で一番最初に好きになったのは、ジェイソン・キッドなんですよ。今はレイカーズのアシスタントコーチですよね。ジェイソン・キッドは本当にすごかったですから。スーパーマジカルなプレーヤーですよ。ワクワクするようなプレーを見せられるという部分で、当時のジェイソン・キッドは夢中で見ていましたね」
――バスケを知らない人でもその名前は知っているくらい有名ですが、具体的に何がすごかったんですか?
「全体的にすごいですけど、やっぱり一番はゲームメイク能力ですね。今でいうとクリス・ポールに近い気がしますね。コートを人間目線だけで見ていないというか、ドローンの画が一個あるだろうというくらいに俯瞰して見えているんですよ。アメフトでも優れた選手はそういう風に言われますけど、明らかに上から見ている。加えて凄いなと思うのは、お客さんを沸かせることに懸けているところ。おしゃれパスが多いんですよ。子どもたちが真似したくなるようなパスでフィニッシュに持っていく。僕もそのパスを真似して、よく怒られましたけど(笑)」
――確かに、日本の部活とかでやったら怒られそう(笑)。
「背中を通したり、首の後ろを通したりして、結局ミスになって、監督に交代させるぞと言われてましたね(笑)」
――やっぱりNBAのポイントガードはおしゃれパスのイメージが強いですよね。
「そこはマジック・ジョンソンからきていると思いますよ。マジック・ジョンソンを見て育った選手は、おしゃれパスを出すんですよ」
――今のNBAを見ていると、そのイメージがだいぶ変わってきましたよね。
「このまえ、ステフィン・カリーとトレイ・ヤングを比較する動画を見たんですよ。カリーが純粋なポイントガードかというと、そうじゃないかもしれないですけど、その動画を見た時に、やっぱり頭の中はポイントガードなんだなと思いましたね」
――シューティングガードのイメージが強いですけどね。
「今はPGレスというか、絶対にカリーがボールを運ぶということはなってないと思うんですよ。登録はポイントガードだけど、プレーはどう考えてもシューティングガードですから。司令塔というよりも、攻撃のリーダーでありながら、ゲームメイクしている感じですよね。現代的なポイントガードだと思います」
――昔と比べると、ポジションの定義がだいぶ変わってきていますよね。
「ジェイソン・キッドの時代に、ポイントガードが急にロゴからシュートを打ったら頭おかしくなったと思われますよ。何考えてるねんと(笑)。でも今は、ポイントガードが点を取る流れが強くなっていますよね。それはやっぱりコービーとか、アイバーソンが出てきた時くらいから、流れが大きく変わった気がします」
――ポイントガードが2人同時に出ていることもありますもんね。
「そうです。トレイルブラザーズで言うと、リラードとマッカラムが2人同時にプレーしていますから。マッカラムはシューティングガード表記かもしれないですけど、プレーは完全にポイントガード。良くも悪くもポジションが広がって来たんですよね。ヨキッチもセンターなのにシュートを決めまくるし、昨シーズンで言うとレブロンがポイントガードをやったみたいに、マルチな選手が多くなりすぎて、ポジションがぼやけていますね」
――スラムダンクだと、ポジションが明らかに分かれているじゃないですか。
「あれは、マジック・ジョンソンとか、ジェイソン・キッドとかが活躍した頃のNBAの影響を受けているんでしょうね。5番の選手が3ポイントを打たない時代だったんですけど、今はその壁がどんどんなくなって、渡り廊下みたいなのものでつながっている感じ。5番なのに3ポイントを打ったり、パスが上手い選手もいる。複雑になりすぎて、いよいよ5対5では止められない時代になった気がしますね」
――昔はオフェンス専門もありでしたけど、今はディフェンスも含め、いろんなことができないといけなくなっていますよね。
「今あるとすれば、ディフェンス専門ならまだ成り立つかもしれないですね。セルティックスにマーカス・スマートという選手がいるんです。昨シーズン、一気にフィーバーして、シンデレラボーイと言われているんですけど、コアなバスケ関係者と話すと、大学時代から注目されていた選手らしいんです。その理由を聞くと、みんな口を揃えて言うのは、ひとりだけディフェンスの次元が違うと。ディフェンス力が高かったマーカス・スマートが昨シーズンのセルティックスでスコアリングもできる選手になった。表記でいうと、スモールフォワードかポイントガードだと思うんですけど、活躍でいうと相手のエースキラーであり、スコアリングエースであるという大車輪の活躍をしたんです」
――まさに究極の選手ですね。
「それと似た道のりを歩んだ選手が、実は過去にいて。それがカワイ・レナード。最初、スパーズに入ってなにもできなかったんですが、ディフェンスが無茶苦茶すごいから、エースキラーとしてレブロンとかに当てまくって。そしたら、いつの間にか相手のエースのいいところを吸収しまくって、気づいたらディフェンスのエースから、エースになったという流れがあるんです」
――ディフェンス専門で試合に出ているうちに、攻撃の能力も身に付けてしまったわけですね。
「そうなんです。それで、この流れで言うと、僕が期待しているのは渡邊雄太選手なんです。渡邉選手はウィザーズ戦で、絶好調のウェストブルックを止めたんです。あの姿を見ていると、おそらく彼にしか見えない何かしらのビジョンがあって、それをいかんなく発揮してディフェンスに活かしていると思うんです。普通、ウェストブルックは止められないですよ。40得点・19アシストとかするわけですから。そんな選手を止められるというのは、オフェンスの知識があるから。ディフェンスのスペシャリストはオフェンスを知り尽くしていないとできないんです。レナードとかスマートと一緒で、渡邊選手の中にあるオフェンスの埋蔵金みたいなものが、これからだんだん出てくると思う。それが体現できるようになれば、本当にすごい選手になると思いますよ」
――野球でも、守備専門だった選手が、試合に出ているうちにバッティングも良くなるケースもありますからね。
「やっぱり、スポーツはディフェンスからなんでしょうね。NBAでも、やたらと速攻が強いチームがあるんですけど、結局、もとをただせばディフェンスが強いんですよ。これはデータにも出ているんですけど、速攻の得点が多いチームは、ディフェンスが強い。そう考えると、いかにディフェンスが大事かということですね」
――どうしても、オフェンスに目が行きがちですけど、ディフェンスにも目を向けると、さらにバスケ観戦が楽しくなりそうですね。
「これはBリーグの話ですけど、河村勇輝選手がBリーグで活躍しているのがすごく話題になりましたよね。確かにパスとかドリブルとかハイレベルにやれていますけど、バスケをずっとやっている人たちが一番びっくりしているのが、スティールなんです。対峙する日本代表クラスのポイントガードから、スティールしちゃうのは、相当すごいこと。普通、ポイントガードは取られたらワンマン速攻されてしまうので、あの位置で取られるのはあり得ない姿勢でプレーしているんですけど、河村選手は、そこで取ってワンマン速攻しちゃうんです。そこに格の違いを感じるし、末恐ろしいなと。オフェンスが天才的と言われてますけど、ディフェンス能力にも注目してもらいたいですね」
→後編はコチラから
俳優 松田悟志
三池崇史監督に声をかけられ99年「天然少女萬NEXT~横浜百夜篇~」でデビュー。2002年「仮面ライダー龍騎」にて主演。中学生のときに本格的にバスケットをはじめ、高校時は大阪大会ベスト8、短大時に関西芸大リーグ4大会のうち3度の優勝とMVPを獲得している。現在も時間を見つけてはバスケットをプレイする、知識も豊富な真のバスケ好きな一面ももつ。
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