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2020.03.07UP

前編:“ショー”としてフリースタイルバスケを進化させたい
ZiNEZ a.k.a KAMIKAZE×松田悟志

バスケ大好き俳優でShot Clockのアンバサダーを務める松田悟志さんが、今回お話を聞いたのは、フリースタイル・バスケットボールの世界チャンピオン「ZiNEZ a.k.a KAMIKAZE」さん。日本の第一人者であるZiNEZ(ジンジ)さんが語るフリースタイル・バスケットボールの魅力とは?

松田_僕はZiNEZさんの動画を見ているからそのすごさをよく知っているけど、改めてZiNEZさんのバスケとの出会いを聞かせてください。

ZiNEZ_バスケットボールと出会ったのは、小学校5年生の時。当時は漫画家志望だったんですが、スラムダンクにはまって、仲のいい友達もみんなバスケをやっていたので、僕も始めてみようと。

松田_最初は競技としてのバスケと出会ったんですね。

ZiNEZ_そうです。それで中学もバスケ部に入ったんですが、ある日、バスケショップに行った時、『AND1 MIX TAPE(アンドワンミックステープ) *アメリカのスポーツメーカー「AND1」が手がけるストリートボール、音楽、映像が融合した作品集。』という映像を見て、純粋にかっこいいなと思って。こんなに自由なバスケがあるんだ。勝ち負けじゃなく、魅せるバスケがあるんだってことに衝撃を受けて、フリースタイルバスケの世界にはまっていきました。そこから毎日、ボールを持ち歩くようになりました。コンビニに行くのもドリブルして行ったくらいですから(笑)。

松田_本格的にフリースタイルの道に進むようになったのはいつくらいですか?

ZiNEZ_中2の時に家族の仕事の関係でカナダのビクトリア島というところに引っ越したんです。そこで、インターネットでフリースタイルバスケットの映像を見ながら、自分でもやるようになりました。魅せるバスケに特化していて、スポーツの要素があるのにファッションの要素もある。音楽の影響とか、ダンスの匂いとか、僕が好きなすべての要素を網羅していたので、気付いたら虜になっていました。15歳の時なので、もう始めてから15年くらいになります。


松田_僕が初めてZiNEZさんを知ったのは、2008年の日本のフリースタイルの大会で優勝したのを見た時。たしか最年少優勝でしたよね。

ZiNEZ_あの時は18歳くらいだったので、始めてから2年半くらいの頃ですね。

松田 はやっ! そんなにすぐに日本一まで上り詰めるとは!

ZiNEZ_でも、フリースタイルは日本のレベルが一番高いんですよ。悔しかったのが、日本からカナダに引っ越して、こんなにかっこいいものを見つけたと思っていたのに、フタを開けてみたら日本のほうがかっこいいことをやっているという…。

松田_フリースタイルバスケの発祥はアメリカだと思うんですけど、日本のほうがレベルが高いのはなぜなんですか?

ZiNEZ_僕がカナダに住んでいたから思うことなんですけど、日本はバスケットコートが少ないんですよ。バスケをやりたくても、やる場所がない。そういう人たちがバスケをやる代わりに、クラブとか駅前で、バスケットボールを使ったダンスとして、フリースタイルを発展させていったと思うんです。だから、アメリカやカナダと日本とでは、スタイルが全然違う。アメリカはバスケット寄りで、日本はダンス寄りというか。日本はドリブルはあまりしないけど、技のバリエーションが他の国より圧倒的に多い。コートがない環境が、逆に長所になっていると思います。

松田_確かに海外だとバスケットの試合のハーフタイムにやることが多いですけど、日本はクラブのイベントとしてやることが多いですよね。僕も最初に見たのはクラブでしたから。


ZiNEZ_コートがなくてもできるのが、フリースタイルの良さ。ボールひとつあれば、どこでもできる。基本的な部分はアメリカから渡って来たけど、日本独自の発展の仕方をしたと思いますね。

松田_そのレベルの高い国で、よく18歳で優勝できたなと。

ZiNEZ_大きかったのは、カナダでストリートの距離感を知れたこと。リアルな空気を体感できたところが、他の人との違いだったかもしれないですね。誰よりもバスケットボールに触れていたので。それこそ、キャプテン翼みたいに(笑)。カナダでは授業中に机の上にボールを出していても怒られませんでした。

松田_ZiNEZさんが感じるフリースタイル・バスケットボールの一番の魅力ってどこにあると思いますか?

ZiNEZ_現代的なところですかね。バスケットボールがあればどこでもできる。それを動画で撮って、アップロードして、いろんな人に発信できる。その動画に対して、反応が来る。そういう世界に未来を感じたというか、新しいスポーツのカタチがして、かっこいいなと。

ZiNEZ_僕が始めたころは、まだYouTubeがそれほどメジャーじゃなかった時代。当時、僕たちはインターネットでコミュニティを作って、そこでいろんな国の人たちが映像を見せ合っていました。でも、日本はネットで動画を上げるという文化があまりなかった。せっかくレベルは高いのに、動画はあまり出回っていなかったんです。だから、僕が2010年に帰国した時に一番最初にやったのが、いろんな動画を見られるようフリースタイラーが集まる掲示板を作りました。

松田_そういう活動もそうだし、ZiNEZさんは積極的にメディアにも出ていましたよね。地上波のバラエティ番組に出演していたのを見たときは、嬉しかったですよ。ついにこの世界にも光があたったかと。まさにフリースタイルバスケの先駆者ですよね。


ZiNEZ_先輩たちもいるんですけどね。侍ボーラーズのU-LAW(ユーロウ)さんとか。語弊があるかもしれないですけど、あの人はちょっと頭おかしいなと(笑)。フリースタイルバスケができる前から、クラブにバスケットボールを持って行って、ひとりでパフォーマンスしていたらしいですから(笑)

松田_U-LAWさんにはまだお会いしたことないんですけど、面白い人だなと思って、ツイッターをフォローしていたんですよ。そしたら向こうもバスケ好きの俳優ということでフォローしてくれて。それで僕が『炎の体育会TV』の1on1で優勝した時に、誰よりも早くお祝いのメッセージをくれたんです。

ZiNEZ_バスケに対する熱意がすごいんですよね、あの人は。フリースタイルバスケはまだまだマイナーなカルチャーですけど、マイナーだからこそ濃厚な人間が集まる。愛が強すぎたり、癖が強すぎる人が、それを個性として売りに出しているのが魅力だなと思うんです。熱意だったり、オタク魂。そういうものも日本のフリースタイルに大きな影響を与えていると思います。

後編に続く。

Photo:Yuichi Sugita
Text:Yuhei Harayama
Styling:Shiori Toba(松田悟志)

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