2020.03.09UP
後編:“ショー”としてフリースタイルバスケを進化させたい
ZiNEZ a.k.a KAMIKAZE×松田悟志
俳優の松田悟志さんと「ZiNEZ a.k.a KAMIKAZE」さんによるバスケ談義の後編では、フリースタイル・バスケットボールのさらなる魅力に迫ります。ZiNEZ(ジンジ)さんの知られざる努力や、観戦の楽しみ方など、様々なテーマで盛り上がりました。
松田_まだまだフリースタイル・バスケットボールの認知度は高いとは言えませんが、着実に広がっていますよね。本当にすごいテクニックを持った人たちが、熱い想いを胸にパフォーマンスしている姿をいろんな人に見てもらいたい。
ZiNEZ_今はBリーグも人気になってきて、フリースタイルをハーフタイムにやることも増えてきていますね。僕も呼ばれることもありますし、チャンスも増えていると思います。
松田_ハーフタイムにやったり、クラブのイベントもある。コンテストもありますしね。あとは、やっぱり動画。最近もZiNEZさんが公園でパフォーマンスしている動画を見ましたけど、あれもカッコよかったなあ。
ZiNEZ_公園とかストリートとか、ロケーションを生かすのもフリースタイルの魅力だと思っています。あの場所でとか、あれをこうやって使ってとか、いろんなアイデアを入れながら動画を撮っています。
松田_ZiNEZさんは長くフリースタイルをやっているなかで、変化しているところもありますよね。最近、意識しているのはどこですか?
ZiNEZ_最近はダンスですね。フリースタイルはマルチカルチャーな部分が強いので、ダンスもそうですし、パントマイムとか、アクロバットとか、いろんな要素を取り入れれば、どんどん広がっていくんです。僕は、ずっとフリースタイル・バスケットボールを極めたいと思っていて。極めれば、ショーとして独立したものにできるんじゃないかと。バスケに付随したエンタメじゃなくて、バスケから生まれたエンタメ。そういうものにしてきたいんです。結局はボールなんですよ。ボールの使い方、見せ方は無限にある。いろんな要素を取り入れて、その可能性を広げていきたいですね。
松田_パントマイムが入っているのは、ZiNEZさんが最初ですよね?
ZiNEZ_やり始めたときは、反対の声もめちゃめちゃありましたよ。何やっているかよくわからないって。でも、可能性にリミットをかけたら、フリースタイルの意味がなくなるんです。ボール一個で、ショーとして2時間楽しませることができるようになるのが、僕の一つの目標ですね。だから、ダンスやパントマイムだけじゃなく、これからは演技も大事になると思って、舞台をやってみたり。正解が分からないなかで、究極のフリースタイルを今は構築している段階ですね。
松田_ストイックですね。もう15年近くそうやって生活されているわけですね。
ZiNEZ_ほぼ毎日やっていますね。でも、全然大変じゃなくて楽しいだけ。ボールを持って2、3時間身体を動かすだけですから。ジムとか、ジョギングとかと一緒。それを自分の好きなものでできるんだから、楽しさしかありませんよ。
松田_最近は子どもに教えることもあるそうですね。
ZiNEZ_僕だけじゃなく、いろんな人たちが教えるようになってきていますね。個人的には、自分の良さを表現してほしいし、正解がないのがフリースタイルの答えだと思っているので、先生は向いていないと思っています。ただ、せっかく教えるなら、しっかりと基礎を作って教えていこうとみんなで話し合って。そうやっているうちに、才能のある子どもたちがどんどん出てきているんですよ。今、北海道で世界にも通用するような中学生も出てきていて、これからもどんどんすごい子どもたちが出てくると思います。
松田_若いパフォーマーが出てくると、フリースタイル界も盛り上がっていきますよね。
ZiNEZ_今の子どもたちに合っているスポーツだと思いますよ。ひとりでできるし、動画を撮って上げるというやり方が、今風ですから。
松田_まだフリースタイルバスケの世界に触れていない人も多いと思いますが、これから見てみたいという人たちに対して、こういうところを見てほしい。こういうところを見れば面白い。そういうポイントがあれば、教えてください。
ZiNEZ_もちろん見方というのは人ぞれぞれだと思いますし、楽しみ方に正解はありません。ただ、フリースタイルの一番の魅力は言葉が必要ないということ。それを僕は海外で感じました。やる側の意見になってしまいますけど、技をやってボールをパスして、やってごらんと身振り手振りで伝えられるのがフリースタイルバスケなんです。ボール一個で手と手を取り合える、言語を越えたコミュニケーションですね。ダンス以上に言葉を使わず、人とつながることができる。まずはその魅力を感じてもらいたいですね。
松田_動きや技の部分ではどうですか?
ZiNEZ_パフォーマンスという部分では、音楽に合わせてボールがどう動いているのか。そこを見てもらうと、面白さを感じられると思います。音楽をボールでこういう風に表現しているのかとか。ちょっとフィギアスケートに近いかもしれないですね。そこを意識してもらうと、面白さだったり、難しさがちょっと分かってもらえると思います。
松田_映像もそうですけど、生で見るとまた一味違いますよね。
ZiNEZ_そうですね。大会を見てもらえたら一番うれしいです。みんな本気でプライドをかけていて、大の大人が負けると泣くくらい。僕も、負けたら泣きますね(笑)。それくらい感情をあらわにして何かをやるって、今の世の中では少ないじゃないですか。身体とボールだけを使って、技が決まるか決まらないかを競い合う。1分間の感情のぶつかり合いは、揺さぶられるものがあると思います。
松田_ZiNEZさんが言うことは、すごくよくわかりますね。本当に心が動かされますから。見る側の気持ちとしては答えは一つで、とにかくかっこいいということ。しかも選手の数だけ、そのかっこよさが違う。まずは難しいことを考えずに、「めちゃくちゃかっこいいな」という感情を味わってほしいですね。男女問わず、音に乗せてかっこいい動きをしている人を、目をハートにして楽しんでいただけたら嬉しいなと。
ZiNEZ_そう言っていただけると、ありがたいです。生でも映像でもいいので、ボールを使って、真剣にこんなことをやっているというのを見てもらえたら、この競技の良さを感じてもらえるかなと思います。
松田_僕のおすすめは、ZiNEZさんも参加してている『NINJA SKILL BALLERZ(ニンジャ スキル ボーラーズ)』の映像ですね。忍者の姿で、三味線の音に合わせて、ものすごいパフォーマンスを見せてくれるんです。あの世界観には圧倒されますね。世界にも驚きを与えたまだフリースタイルバスケに触れたことのない方はまずあの映像を、見てほしいですね。
Fin
Photo:Yuichi Sugita
Text:Yuhei Harayama
Styling:Shiori Toba(松田悟志)